乳房全摘手術と温存療法 メリットや生存率の違い

乳がんの手術には、大きく分けて二つの術式があります。

乳房をすべて切除する全摘出手術と、切除する範囲を最小限に抑える乳房温存手術です。

今回は二つの手術法について書いていきます。

全摘出手術はどんな手術?

乳房全摘出手術(乳房切除術)は、乳房を丸ごと切除する方法です。

乳頭や乳輪、皮膚も含めて切除することになります。

以前の標準治療であったハルステッド術式の場合は、乳房周辺の大胸筋や小胸筋も含めて切除していましたが、筋力の低下や腕の可動域に影響が出るなど日常生活に悪影響が出るため、現在の全摘出手術では基本切除しません。

このことから、胸筋温存乳房切除手術とも呼ばれます。

全摘出手術のメリット

乳房をすべて切除するため、乳房を温存した場合に必要となる放射線治療の必要がありません。

放射線治療は、治療に通常約6週間の期間が必要となるので、その分早く治療を終えることができます。

全摘出手術のデメリット

乳房温存療法と比較して、乳輪や乳頭、皮膚まで切除するため、手術後の見た目は悪くなります。

乳房温存療法はどんな手術

乳房温存療法とは、乳頭や乳輪を残し、がんができた部分とその周辺の正常な乳腺も含めて切除する術式です。

できるだけ多くの乳房を残せるよう、実施されます。

一時期は多くの方が乳房温存療法を希望しましたが、乳房再建術が発達した結果、現在は全体の6割程度となっています。

乳房温存療法のメリット

乳頭や乳輪を残すため、全摘出手術と比較して精神的な負担を軽減することができます。

しこりの位置や大きさ、切除する範囲にもよりますが、全摘出手術よりも見た目は保たれます。

乳房温存療法のデメリット

残した乳房に再発する局所再発を防ぐため、放射線治療が必要となります。

放射線治療をした場合の再発率は14%、しなかった場合は39%となっています。

 

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術式による生存率の影響は?

乳房全摘手術と温存療法、いずれの場合も生存率に差はないとの結果が出ています。

しかし、乳房温存療法につていは、上記にあるように局所再発の可能性が残ります。

一方全摘出手術でも局所再発の可能性は2%とされています。

乳房再建手術

乳がんの治療で失った乳房を、人工的に作って復活させる手術です。

エクスパンダ―という拡張期により皮膚を伸ばし、できたスペースに人工乳房を入れる「シリコン・インプラント」と、身体の別のところから自分の組織を移植して再建する「皮弁法」があります。

乳房を失うことは、女性にとって多大な精神的負担が発生します。

手術後のQOL(クオリティオブライフ)、つまり生活の質の向上のため、乳房再建手術は非常に有効です。

まとめ

それぞれの手術の内容、メリット・デメリットをまとめました。

初期であれば乳房温存療法を勧められることが多いようです。

ただし、どちらを選択するかは個人の価値観によるようですね。

たとえ初期でも、放射線治療が必要で治療に時間がかかることや局所再発の可能性を考えて、全摘出手術を選ぶ人もおられます。

逆に、大幅に乳房を失うことになっても、少しでも残してほしいと希望する方もおられます。

最も大切なことは、患者自身が納得してどちらの手術を選ぶかということです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

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