乳がんのサブタイプによる分類とは?

乳がんには進行度合いを示す「病期(ステージ)」の他に、乳がん細胞が持つ遺伝子によって分類される「サブタイプ」と呼ばれるものがあります。

サブタイプは、手術後の治療、例えば化学療法である抗がん剤治療や、ホルモン療法などを用いるかどうかの判断に使用されます。

今回は、このサブタイプを詳しく書いていきたいと思います。

 

あわせて読みたい

 

サブタイプ分類に使われる要素とは?

サブタイプを分類するには、次の数値を組み合わせて判断します。

ホルモン受容体の有無

ホルモンと作用する構造を持つ細胞を、ホルモン受容体陽性といい、がん細胞の中にホルモン受容体陽性のものがあると、ホルモンと作用してがん細胞が増殖します。

ホルモン受容体陽性ということは、ホルモンの作用を抑えるホルモン療法の効果が期待できるということになります。

HER2タンパクの有無

HER2タンパクはがん細胞の増殖にかかわり、HER2遺伝子を過剰に持っている状態をHER2タンパク陽性と言います。

HER2タンパク陽性の場合、分子標的薬の効果が効果が期待できます。

Ki67の数値による増殖能力

細胞が分裂するときに生じるタンパク質で、乳がんの増殖能力を示すマーカーとして用いられます。

マーカーの数値が高いと乳がんの増殖能力が高いと考えられています。

サブタイプの分類と分類別の推奨される薬物療法

乳がんのサブタイプと推奨される薬物療法は次の表のように分けられます。

ホルモン受容体陽性 ホルモン受容体陰性
増殖能力 低い 高い
HER2陰性 ホルモン受容体陽性HER2陰性タイプ トリプルネガティブ
ホルモン受容体陰性
HER2陰性
ルミナルAタイプ
かつ増殖能力が低い
ルミナルBタイプ・HER2陰性
かつ増殖能力が高い
HER2陽性 ルミナルBタイプ・HER2陽性
ホルモン受容体陽性
HER2陽性タイプ
HER2陽性
ホルモン受容体陰性
HER2陽性

ルミナルAタイプ

ルミナルAタイプは、ホルモン受容体陽性でホルモンによって増殖するがんですが、増殖能力は低いタイプです。

ホルモン療法を推奨されます。

ただし、がん細胞の悪性度が高い場合は、再発リスクを抑えるため化学療法が追加されることもあります。

ルミナルタイプはA、B合わせて乳がん全体の60~70%程度を占める最も多いタイプです。

ルミナルBタイプ・HER2陰性

ルミナルAタイプに比べて増殖能力が高いため、ホルモン療法に加えて化学療法も行われます

ルミナルBタイプ・HER2陽性

ホルモン受容体とHER2いずれも陽性のため、ホルモン療法と抗HER2療法ともに効果が期待できます

抗HER2療法を行う場合、化学療法を併用することが推奨されています

HER2陽性

ホルモン受容体が陰性の為、ホルモン療法の効果は期待できません。

抗HER2療法と化学療法の併用が推奨されています

このタイプは乳がん全体の10%程度です。

トリプルネガティブ

ホルモン受容体、HER2タンパクのいずれも持たないタイプで、ホルモン療法や抗HER2療法の効果が期待できません。通常化学療法を行います

まとめ

彼女の場合は、がんの大きさが2.8㎝、リンパ節への転移がない(正確には微小転移があった)ステージⅡaでしたが、手術後の病理検査の結果、ホルモン受容体陽性でHER2が陰性、しかし増殖能力を表すKi67の数値が80%と高く、ルミナルBタイプに分類されました。

その結果、再発のリスクを下げるために、化学療法とホルモン療法の実施を勧められました。

このように、抗がん剤治療などについては、ステージ(病期)だけでなく、サブタイプも含めて判断されます。

参考にしていただけると幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

あわせて読みたい

クリックが励みになっています。いつもありがとうございます。
にほんブログ村 病気ブログ 乳がんへ
にほんブログ村


乳がんランキング