乳がん標準治療のひとつ 放射線療法の目的や効果
放射線というと、身近なところではレントゲン撮影が浮かぶと思いますが、乳がんの治療でもレントゲンで用いられるのと同じX線が使われています。
このページでは、乳がんで行われる放射線治療が具体的にどのようなものなのかを、取り上げたいと思います。
放射線療法とは?
放射線療法とは、人工的に作り出した放射線を用い、患部に当てることによってがん細胞のDNAに損傷を与え、増殖を抑えたり、死滅させたりします。
手術、薬物療法(抗がん剤治療)と並んで、がんの3大治療のひとつとされています。
放射線療法で使われる放射線は?
一般的に用いられるのは、高エネルギーX線です。
レントゲンなどに使われるX線の数十倍の威力のX線を用いて行われます。
放射線療法で用いられる主なものとして、X線の他にもγ(ガンマ)線、電子線などがあります。
健康へのリスクはない?
放射線療法によってがん細胞を抑えたり、死滅させることができますが、がん細胞ほどではないものの、正常な細胞にも影響があり、副作用として現れます。
放射線療法による副作用は、倦怠感や食欲不振といった「全身的な副作用」と、皮膚のただれなどの「局所的な副作用」に分かれます。
また、ごくわずかながら、治療後しばらく経過してから発生する「晩期の副作用」があります。
放射線療法による副作用についてはこちらの記事をご覧ください
乳房温存療法術後の放射線療法の目的
乳がんの治療において、乳房温存療法術の手術を選択した場合は、温存した乳房や周囲のリンパ節からの再発を防ぐために放射線療法が組み合わされます。
放射線療法を実施する目的は、手術で取りきれなかった可能性がある、目に見えないがんを根絶することです。
乳房温存術の場合、目に見えないがん細胞が乳房に残っている可能性があり、そのままでは残した乳房に再発する局所再発のリスクがあるからです。
放射線療法は、日本乳癌学会の乳癌治療ガイドラインでも、すべての乳房温存術後の患者さんに勧めている標準治療に位置付けられています。
また、乳房温存療法以外でもしこりが5cm以上と大きかった場合や、脇の下のリンパ節に転移が確認された場合は、胸壁や周囲のリンパ節に再発する可能性が高いため、放射線治療を行うのが一般的となっています。
放射線療法の実績は?
乳房温存術を受けた患者さんの標準治療である放射線療法ですが、その効果としてどのような結果が残っているのでしょうか。
乳房温存術後、20年間における局所再発率は
放射線療法を受けた場合・・・・14%
放射線療法を受けなかった場合・・・・39%
となっており、局所再発の防止には明らかな効果が認められています。
放射線療法の流れ
次のような流れで放射線療法は進められます。
初回診察
まずは担当医の診察により、放射線療法がどのようなものか、今回の治療がどのような目的でなされるか、これからどのような計画で治療が進められるか、期待される治療の効果や治療期間といった説明があります。
治療の詳細については、これまでの手術や薬物療法の治療経過や、CT検査、病理検査などのこれまで受けた検査の情報により検討され、患部のどの部分にどれぐらいの量の放射線を照射するか、どれぐらいの期間行うか、という計画が立てられます。
また、放射線療法による副作用の説明もあります。
あらかじめ疑問点や不安な部分など聞きたいことを準備して、この診察で解決しておくようにしましょう。
初回診察のリアルな様子はこちらの記事をどうぞ
乳房温存療法後の放射線治療が始まる
CT検査等による照射位置の調整、マーキングの実施
放射線療法が必要な場所の確認と、これから実施する放射線の照射が毎回確実に必要な部位に当たるよう、CT検査とマーキングが身体に施されます。
患部の確認にはCT検査の他に、MRIを用いる病院もあります。
いずれも治療を受ける姿勢で行うことにより、正確な位置の確認、固定するための目印をつけます。
マーキングは身体に直接マジックで引かれ、放射線療法が終了するまで使用するので、日常生活の中で消えないように注意が必要です。
夏場は発汗によって流れ落ちてしまわないように、また入浴時に強くこすらないようにしてください。
また、マーキングのインクが衣服に付着することがあります。
1ヶ月程度のことなので、付着しても良い服を着るなどの工夫をしてください。
病院によっては、汗や入浴でマーキングが消えないよう、保護テープを貼ってくれるところもあります。
心配であれば、相談するのも良いでしょう。
実際のマーキングの様子はこちらの記事をご覧ください
放射線治療のためのマーキングはけっこうつらい
放射線の照射
照射は手術を行った乳房全体に、通常1日に1回2Gyほどを、週5回、全部で5週間の計25回連続して行われます(総線量45〜50Gy程度)。
脇の下のリンパ節に転移が4個以上あった場合は、鎖骨上窩と呼ばれる鎖骨周辺への照射も行うことがあります。
実際に照射する際は、事前に行ったマーキングで位置合わせ、機械に横になります。
放射線の照射を受ける時間は、1~3分ぐらいです。
病室に入ってから終了するまで、おおよそ10~15分程度で終わります。
痛みなどは特にありません。
具体的な照射の様子などはこちらの記事をご覧ください
乳がんの術後の放射線治療 1回目の照射
まとめ
放射線と聞くと、原子爆弾や原子力発電所の事故による放射能を思い出し、不安になる方もいらっしゃると思います。
でも、私たちは普段の生活の中でも放射線に触れています。
そして、適切に利用することで、がんの治療に大いに役立つものとなります。
ですので、副作用はありますが、必要以上の心配をする必要はありません。
乳がんと闘うにあたっては、とても強い味方になってくれるのですから。
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