ホルモン療法を受けない!彼女の思いに寄り添ってくれた女医さん
放射線治療で入院している間、私たちは主にLINEでコミュニケーションを取っていました。
放射線治療が終盤にさしかかり、これからホルモン療法に入ろうかという時、彼女からひとつの決断を聞かされました。
それはホルモン療法を受けないことでした。
ホルモン療法を受けたくない理由
彼女がホルモン療法を受けないと決めた理由は、妊娠できなくなるからです。
彼女の乳がんが発覚したのは32歳の時、それから手術や抗がん剤治療、放射線療法に約1年を費やしました。
そして、次に待っているのは10年間のホルモン療法です。
10年間経つと、彼女は43歳になります。
これでは絶対に子供を持つことができない、妊娠して出産することができない、だからホルモン療法をせずに子作りをしたい!
彼女はそう思ったのです。
これは本当に切実な思いでした。
彼女の治療内容はこちらの記事をご覧ください
ホルモン療法を受けないで妊娠を求める
再発の可能性はどう変わる?
一般的な数字として、手術後無治療で2人に1人、抗がん剤治療をすることで4人に1人、さらにホルモン療法をすることで10人に1人の再発率とのデータがあります。
また、妊娠をするということは女性ホルモンが活発になって、再発の可能性が増すことになります。
ということは、抗がん剤治療を+ホルモン療法10年間するのと、抗がん剤治療のみでやめるのとでは、再発の可能性は格段に上がってしまうということです。
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抗がん剤治療の影響で彼女が妊娠するのは極めて厳しい
ホルモン療法を受けずに妊娠を求めることで再発率が格段に上がる一方で、彼女が妊娠できる可能性は極めて低いと言われていました。
実際にホルモン療法を中断して、妊娠、出産される方はいらっしゃるそうですが、彼女の場合はそれをしても妊娠自体が難しかったのです。
そのことは抗がん剤治療をする際に医師にはっきり言われました。
それに、彼女は元々多嚢胞性卵巣症候群という病気を持っていて、そちらの治療も必要な状態でした。
命を優先してほしい 女医さんの思い
夢に見ていた将来像
それでも妊娠するためにホルモン療法を受けない選択をしようとする彼女。
私は電話で相談に乗っていました。
彼女の意思は固く、ほんの少しでも妊娠の可能性があるなら、その可能性にかけたいというのが彼女の強い強い気持ちでした。
彼女はそれほど子供が欲しかったし、私が子供を欲しがっていたことを知っていました。
多嚢胞性卵巣症候群を乗り越えて、いつか子供と共に幸せな家庭を作って行こうね、と話し合っていたからです。
赤ちゃんを産めるなら、たとえ再発して命が短くなっても良いと言うのです。
もちろん、私は彼女に命を優先してほしいと伝えました。
いくら子供ができても、彼女がいなかったら成立しません。
まだ見ぬ子どもと彼女の命、どちらを取るかと言われれば、迷うことなく彼女の命を取ります。
彼女の心を溶かした女医さんとの時間
当時、彼女にかかわってくださっていたのは女医さんでした。
33歳の彼女より少し年上でしたが、それほど離れていません。
おそらく同じ30代の女性でした。
彼女が女医さんに意思を伝えたところ、とても困惑されました。
そしてある日外来の仕事が終わった後、入院中の彼女のところへ来てくれたのです。
担当の女医さんは、彼女の思いをゆっくりと、しっかりと聞いてくれました。
その上で、ホルモン療法を受けないことによる再発のリスクを取る価値がないほど、妊娠できる望みが少ないことを伝えました。
その時、女医さんは涙ながらに話しをしてくれたそうです
お医者さんが泣きながら患者さんに話しをするなんて、聞いたことがありません。
それだけ彼女に思いを寄せて、話しをしてくれたのだと思います。
ホルモン療法を受ける決断
彼女が女医さんと話をすることは、事前に聞かされていました。
私は遠く離れた地で、女医さんとの話しの後、彼女からの連絡を待ちましたが、その日の夜携帯が鳴ることはありませんでした。
翌日、彼女からホルモン療法を受ける旨の連絡がありました。
女医さんと話しをした後、一晩ひたすら考えて、自分で決断したのです。
「ホルモン療法が終わってもまだ43歳、それからでも遅くないよね。
状況が良かったら、途中で中断して妊娠してもいいんだし」
彼女は自分に言い聞かせるようにそう話しました。
「もう産めないのはわかってる。でも少しでも可能性があると思いたい」そんな気持ちが痛いほど伝わってきました。
長い長い夜でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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